ホメオパシーの歴史

◆ハーネマンの発見
サミュエル・ハーネマンが「同種の法則」を発見したのは、
1790年のドイツでのことでした。
ハーネマンは45歳でした。
当時の西洋の医療は、梅毒や疥癬の患者に水銀を使ったり、
瀉血で多量の血を抜いたりと、とても野蛮なものでした。
ハーネマンは医師であり、優秀な化学者でもありましたが、
当時の医療に絶望し、医師の仕事から遠ざかっていました。
しかし家族を養うには働かなければなりません。
彼は海外の医学書や薬草書を翻訳して収入を得ていました。
そんなある日、スコットランドの William Cullen の薬草書を翻訳しているとき、
次のような文章が目にとまりました。
「キナの樹皮がマラリアに効くのは、その苦さと収斂性のためである」
ハーネマンは即座に疑問を抱きました。
苦い薬草はほかにもたくさんあるのに、
マラリアに効くのはキナの樹皮だけ。
キナの樹皮にはそれ以外の何かがあるに違いない。
そこでハーネマンはキナの樹皮を自分でとってみました。
すると手足の冷たさ、眠気とだるさ、震えや不安感など、
マラリアの間欠熱の症状によく似た症状が現れたのです。
キナの樹皮をとるのをやめると、症状も消えました。
キナの樹皮がマラリアに効くのは、
キナの樹皮がマラリアに似た症状を引き起こすからではないか。
ハーネマンはさまざまな薬草を使って実験をくりかえし、
自分の仮説が正しかったことを知りました。
そしてその理論にもとづく医学をホメオパシーと命名し、
1843年に88歳で亡くなるまで、
多くの病人をホメオパシーで治療するかたわら、
ホメオパシー医学をさらにすぐれたものにするために研究を続けました。

◆ホメオパシーの普及
ホメオパシーは異端の医学として攻撃を受けながらも、
多くの人々に受けいれられて急速に普及し、
ハーネマンが亡くなった1843年ごろには、
世界29カ国に広まっていました。
英国では皇室をはじめとする富裕階級がホメオパシーを擁護し、
性病の治療や、競走馬の治療に利用していました。
(ホメオパシーは動物や植物にもよく作用します)
英国の場合、ホメオパシーは「金持ちの療法」として広まり、
この時期には一般庶民にあまり普及しなかったというのが特徴です。
英国の植民地インドにもホメオパシーは広まりました。
英国とは違い、インドでは貧しい人々のあいだにも広く普及しました。
マハトマ・ガンジーもマザー・テレサも、
多くの国民を救う療法としてホメオパシーを支持しました。
ガンジーは言っています。
「ホメオパシーは最新の洗練された療法であり、
経済的に、非暴力的に、病人を治療することができる。
政府はこの国でホメオパシーを奨励し擁護しなければならない」
このような流れはインドでは衰えることなく現在まで続いています。
北米にホメオパシーがもたらされたのは1825年でした。
はじめは「ただのまじないだ」などとばかにされたものの、
コレラや黄熱病などの流行病に威力を発揮して認められ、
1870年代から80年代に最盛期を迎えます。
ニューヨークタイムズ、政治家、財界人などもホメオパシーを支持し、
1890年には文豪マーク・トウェインがハーパーズ・マガジンに書いています。
「ホメオパシーが入ってきたおかげで、旧派の医者は自分たちの職業に関し、
何かしら理にかなったことを学ばなければならないはめになった.....
従来の医者たちの圧力にもかかわらずホメオパシーが生き延びたことは、
正直とてもありがたいことである」
19世紀末にはホメオパシーの薬局が1000軒ほど、
ホメオパシーの医学学校が22校もあり、
29種類のホメオパシー雑誌が刊行されていました。
日本でも第二次大戦前、
東京にホメオパシーのレメディーを売るお店があったそうです。
相談会にいらっしゃったご高齢の男性からそんなことをうかがって、
びっくりしたのを覚えています。
これだけ普及したのにはいくつか理由があります。
まず、従来の治療法よりも安全で、より効果があったということです。
1854年にロンドンでコレラが大流行したとき、
従来の治療を受けた患者の死亡率が53.2パーセントであったのに対し、
ホメオパシー治療を受けた患者の死亡率は16.4パーセントでした。
1878年に北米南部で黄熱病が流行したときも、
ホメオパシー治療を受けた患者の死亡率は、
普通の病院の治療を受けた人の死亡率の3分の1でした。
第二の理由は、専門知識のない人でも気軽に使え、
単純な急性病ならそれで対処できたということです。
開拓時代のアメリカの無医村では、多くの家庭がレメディーキットを備えていて、
自分たちで病気に対処していました。
北米で最初にレメディーキットをつくったHyland's社は、
19世紀末期に100万個あまりのセルフケアキットを売りさばいたそうです。
一般庶民につづいて医師たちもホメオパシーの効果を認め、
一時期は医師の多くがホメオパシーを使っていました。
もうひとつの理由は、レメディーが安価であったことです。
レメディーは少量の物質を何倍にも希釈してつくるので、
原材料費があまりかかりません。
つくり方もとてもシンプルで、
大掛かりな機械や化学の専門知識はいりません。
また原料のほとんどは自然界のものですから、
化学薬品のように特許をとってもうけることはできません。
その分、価格は抑えられます。
しかしこのような利点は、ある人々にとっては苦々しいものでした。

◆衰退
ホメオパシーが普及すると、医者や薬品会社はもうからなくなります。
脅威を感じた薬品業界と医学界は、
こぞってホメオパシーをつぶしにかかりました。
(もしかして今の日本も・・・)
北米のアメリカ医学協会は1847年に設立されましたが、
これもその3年前にできたアメリカホメオパシー協会に
対抗するためだったとか。
アメリカ医学協会の委託を受けて1910年にFlexner Reportが発表され、
医学学校の評価基準が定められました。
これが生理化学や病理学を優先し、ホメオパシー的な方法を否定する基準であったため、
ホメオパシーにとっては大きな打撃になりました。
ホメオパシー学校の多くは補助金を削られ、学生は減り、
運営は困難になりました。
北米で1900年に存在していた22のホメオパシー学校のうち、
1923年まで存続したのは2校のみ。1950年にはゼロとなりました。
さらに、20世紀初頭は微生物学・化学・生理学の発達にともない、
野蛮な医学が、近代的な医学へと、変化したときでもありました。
その基盤になるのは顕微鏡や実験室など物質的・客観的な証拠です。
ホメオパシーは患者の言葉や臨床データや経験を土台とし、
非物質的な手段(レメディー)を用いる医学です。
物質的・客観的証拠を求める風潮のなかでは、
みずからを主張するすべはありませんでした。
このような状況のなかで、ホメオパシー内部でも分裂が起こり、
1920年代から60年代にかけて、ホメオパシーは急速に影をひそめてしまいます。

◆復活
しかし1970年代ごろから、カウンターカルチャーの波のなかで、
ホメオパシーは再び芽吹きはじめました。
はじめは輝かしく見えた現代医学のさまざまな弊害に、
人々が気づきはじめたこともその一因でしょう。
ニューヨークタイムズによると、
現在、英国でホメオパスにかかる人の数は、毎年39パーセントの割合で増加しています。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの調査では、
取材に応じた家庭医(GP)の42パーセントが患者をホメオパスに紹介した経験があります。
タイムズ・オブ・ロンドン紙の調査でも、
家庭医(GP)の48パーセントが患者をホメオパスに紹介したことがあると語っています。
フランスでは現在、11,000人の医師がホメオパシーのレメディーを処方し、
フランス国民の25パーセント以上がレメディーを利用したことがあるとのこと。
ホメオパシーのレメディーを扱う薬局は2万軒、
ホメオパシーの学位が得られる医学学校は6校あり、
薬学と獣医学の学校ではすべてホメオパシーの講座を設けています。
Le Nouvel Observateur誌は社説のなかで調査結果に触れ、
「ホメオパシーは効果があるどころか、ときとして目覚しい結果をもたらす」
と締めくくっています。
インドでは19世紀半ば以来、ホメオパシーは順調に広がりつづけました。
1973年には正式な医学として国に認められ、
アロパシー、アーユルベーダにつぐ第三の療法として根付いています。
ホメオパシーの医学カレッジは186校あり、うち35校が公営です。
ホメオパスの数は約25万人で、毎年1万人の新ホメオパスが誕生しています。
インド国民の20パーセント近くが健康管理をホメオパシーに頼っています。
入院設備のある公営のホメオパシー病院は数百箇所、
公営のホメオパシー診療所は数千箇所、
ホメオパシー薬局も数千箇所、
ホメオパシー研究施設は約150箇所という盛況ぶりです。
政府公認のホメオパスの約3割が、毎日100~200人の患者を診ています。
北米では、1970年に50人にも満たなかったホメオパスが、
10年後には約1000人に増えました。
ワシントンポスト紙によれば、ホメオパシーを専門とする医師は、
1980年から82年の2年間で2倍にふえました。
FDA(米国食品医薬品局)の消費者向け雑誌によると、
1970年代後半から80年代前半にかけて、
ホメオパシーのレメディーの売り上げは10倍に増えました。
1990年代に入ると、ホメオパシーのレメディーの売り上げは、
毎年20~25パーセントの割合で伸びています。
世界全体でホメオパシー市場は1450万ドルにも達し、
毎年25パーセントの割合で増大しています。
このところ深刻化している薬害や医療費の問題に対して、
薬害がなく安上がりなホメオパシーは、
大きな解決策となる可能性を秘めています。
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